ようやく 5 月らしい晴れ間が戻り気温もちょうどよい過ごしやすい気候で、ひさしぶりにしっかり外出してくたびれた大連休むいかめでした。
昨晩はべちょべちょのわやくちゃでだらだらエニメをみたり包丁をといだりしていたらあっというまに 2 時、さすがにねむれるだろうとたかをくくってお布団へ入ったもののぜんぜんねむけがこず就寝は 3 時半です。もちろん朝も起きられるはずがなくきづけば 10 時、遮光カーテンをつらぬくほどのまばゆい光が差し込んでいてせっかくの晴天とおやすみを無駄にしてしまったむなしさでややガックリしながら起きました。
起きてからは来客用のおふとんを日に当てて、このままだと大連休をグッタリでぬりつぶしてしまいそうなので意を決して身づくろいをしたら外へ出ます。今日の目的地は森美術館、大都市の混雑を思うとユウウツでしかたありませんがチケットも予約してしまったのでもうあとにはひけません。行きの電車では隣の座席に海外っぽいひとびとが乗り込んできて、樟脳とクミンがまざったような香水の匂いと携帯から絶え間なく鳴り響く WhatsApp の通知音であたまがおかしくなるかと思いました。体調がよくなかったり寝不足だったりするとこういうささやかな刺激ひとつひとつでキャーーーとなってしまいますね。つい先日傷害事件があったらしい駅もとおるので見物しにいってみようかという考えが一瞬よぎりましたが悪趣味すぎるのでやめました。
麻布十番駅で降りたら森美術館に向かいます。この駅からだと六本木のイケイケした街並みをぬって 10 分くらい歩かなくてはいけないのがしんどいですね。小腹がすいたのでなにかさっと食べられそうなものがないかと思って探したらちょうどよいおにぎりやさんがあって、いきおい買ったはよいが食べる場所がなく周囲に自販機もないので六本木ヒルズのまんなかでおにぎりだけをムシャムシャ食べるハメになったのがかなりなさけなかったです。おにぎり自体もすぐに腐りそうなべちょべちょぶりで味も薄くてめちゃくちゃまずく、やはりこの街に居場所はないとの意を強めるばかりでした。
さらに森美術館への行き方を忘れていたせいでまちがってオフィスタワーに突撃しかけたりとすでにかなり心が折れそうですが、なんとか辿り着いて「マシン・ラブ ビデオゲーム、AI と現代アート」展を見ます。展示は生成 AI や VR・AR、ゲームエンジンに NFT といったいかにもな最新テクノロジーを駆使したインスタレーションや映像作品でテクノロジーと人間との関係を問い直すというような趣旨で、正直に言えばとにかくくたびれるなという印象でした。やたら映像作品が多いうえそれぞれが 30 分とかのボリュームで、珠玉の 1 本 2 本ならともかく乱雑さと無作為性を前面に押し出した映像ばかりで時空間芸術としてはかなり単調なので感心より先に飽きがきてしまいます。せっかくの機会に得られる情報を最大化したいという強迫的な気持ちで全部見ようとするとキャーーーーーーとなりそうだったので途中で切り上げてしまいました。体調がよければ感じ方もまた違ったのかもしれません。
あと全体的なアプローチとして生成 AI が頻繁に登場するわりに今のところただ使ってみたというところにとどまっているのもちょっと気になりました。どの展示も LLM らしいワードサラダ的な無秩序さや乱雑さに着目するばかりで、それって腐食とかの乱雑さを切り出す過去の技法となにがちがうんだろうという疑問が拭えません。かつての GA とかと同じでまだ生成 AI を使ったという事実だけで評価されるフェーズなのかもしれませんがもっと見たことないものを見せてほしいと思ってしまいますし、長めの映像作品については要約させたらどうなるんだろうなという意地悪な気持ちもすこしあります。とくに LLM どうしに延々会話させるディムート「総合的実体への 3 つのアプローチ」は内容の支離滅裂ぶりがマルコフ連鎖でもできそうじゃない?と思わせるていどのもので、「門」が開きそうになかったのがざんねんです。冒頭には生成 AI に書かせたらしいかんたんな用語解説もあり、そのうち「半導体/トランジスタ」の項目が微妙におぼつかなかったのも印象的でした:
半導体は電気を通したり止めたりすることができる物質です。トランジスタというスイッチを使うことで、半導体に流す電気のオン/オフをコントロールすることができます。半導体に電気が流れている状態を「1」、流れていない状態を「0」とすることで、「二進法」が可能となり、あらゆる情報を表すことができます。半導体とトランジスタは AI 技術を含む電子機器に欠かせない役割を担っています。
半導体によって実装される素子の一種がトランジスタなのでウソではないがなんだかモンニャリする表現ですね。あと二進法が可能になるって何?この先は説明文ひとつとっても吟味が必要になってくるということを端的に示しているという意味では非常に風刺的かもしれません。
作品としては現実の写真をぜんぶ unity のアセットで置き換えた佐藤瞭太郎「ダミー・ライフ」が印象的で、ゾンビと美少女が抱き合っているのが肉体からの解放という感じでしみじみしてしまいました。この小さな銀河は現実のアバターから解放してくれるらしいメタバース元年を待ちわびているのですがその日はいったいいつになったらくるのでしょうか、結局肉体/大地への回帰ですみたいな手垢のついた話をされると大暴れしそうになります。サイバーパンクな街をバイクで疾走する女性配達員を描く作品群「デリバリー・ダンサーズ・スフィア」をゲーム化したキム・アヨン「デリバリー・ダンサー・シミュレーション」はパソコンマスターっぽいひとが真剣にプレイしていて、その様子も含めてよかったです。実際にプレイしてみたら画面がめちゃくちゃみづらくすぐに迷子になるのでバトライド・ウォーを思い出しました。あと人工物の経時変化をシミュレーションして実際の彫刻に起こしたアドリアン・ビシャル・ロハス「想像力の終焉」シリーズは先にコンセプトを読んでおもしろそうと思ったのですが、実際に展示されていたのはしっかり意味がありそうなカッコいい立体物だったのがちょっとざんねんです。せっかくシミュレーションしたんならビフォーアフターで見せてくれよと思ってしまうが、まあこれはアフターだけをみてビフォーとその経緯に思いを馳せるというのがただしい鑑賞態度なんでしょうね。最後は 16 世紀以降の技術の進歩を巨大な図にまとめたケイト・クロフォード/ヴラダン・ヨレル「帝国の計算:テクノロジーと権力の系譜 1500 年以降」、あまりの巨大さと細かさに「門」が開いてしまったひとが作るオリジナルの真実を説明する図だ!と思わせるものがありますが実際には事実しか書いていないというのが新体験です。この分量の情報を壁 3 枚分でまとめるのはインフォグラフィックスという技術のひとつの極致かもしれません。
展示自体はこれで終わりですが、同時開催されていた森美術館のコレクション展示もわりと見応えがあってよかったです。とくに戦後のアングラ文化を取り上げた「東京アンダーグラウンド 1960-70 年代 ─ 戦後日本文化の転換期」はいわば時代の徒花ともいえるごく一時期の熱狂をかなり俯瞰的にまとめていて小規模ながらかなり見応えがありました。万博にたいする批判は万博記念公園で舗装されたあとの歴史にはいっさい登場しないのでおもしろかったです。万博粉砕ブラックフェスティバル、とうぜんあろうとは思っていましたが予想以上の熱量で、現代においてもこういう活動はあるのだろうがどうにも勢いが感じられないのはそれだけ体制がうまくやるすべをおぼえたからなのか電脳世界がかえって個人を興味のサイロにとじこめるようになったからなのか、あるいはこのころに結果を残せなかったという無力感が牙をぬいてしまったのかはすこしきになります。同時にやっていたゴジラ展も見ようか悩んだのですが、ここからさらに左巻きの風刺が効いた映像作品とかを見せられたら帰れなくなりそうなので見送りました。会期は来月までらしいのではたして見に行けるでしょうか。"アート"なものを無秩序に集めたミュージアムショップにゴジラのソフビが置かれてヨドバシみたいになっていたのはよかったです。
美術館を出たのが 14 時すぎ、六本木駅にあったあんみつやさんであんみつとほうじ茶のセットを頼んだらほうじ茶が急須になみなみ注がれていて、残すのももったいないので一気に飲んだらアチアチのチャポチャポになってしまいました。食後はせっかくの大連休ですからやったことがないことに挑戦しようと思い日比谷線から銀座線に乗り換え上野で降りて水たばこやさんに行ってみます。正直に言えば逆張りガリガリ根暗としてシーシャ笑純喫茶笑チルがエモくて写ルンです笑笑という気持ちはいまだにかなりありますが、廃れるどころか定着しつつあるしいい歳して知らないものをイメージでバカにするのもそれはそれでダサいということにようやく気付いたのでとりあえず飛び込んでみることにしました。店内には甘い匂いが充満していて、ソファへもたれかかったカップルが気だるげに談笑しており想像上の阿片窟のようです。顔馴染みばかりの空間でゲホゴホやったあげく大恥かいて逃げ出すはめになったらどうしようと不安だったのですが、正直に初めてでなんもわからんですと伝えたおかげかにこやかに吸い方を教えてもらえました。機器をいじったりする必要があるのかと思っていたら焼いた炭が置かれたらあとはとにかく吸えばいいだけらしい、とりあえず初心者におすすめらしい煙をひやすアタッチメントを装着して、フレーバー?というのは飽きにくそうなジャスミンにします。いざ吸ってみるとアタッチメントのおかげかそれほど刺激が強いものではなく、呼吸器のよわいおたくでもなんとかなりました。酸欠のためか頭が朦朧として現実の光景がビニールの膜を一枚隔てたようになる感覚はぽかぽか陽気の中でのおさんぽ中とまったく同じで、しかしそれならおさんぽのほうが無料だし健康にいいなと思います。あとあんまり関係ないですがずっと煙管を手に持っているのが疲れるな、まわりを見回したらみんなフツーに置いていたのでフツーに置いていいんだと思ってフツーに置きました。やたらドリンクが安いのでコーヒーとチャイをなめるように飲み上野の街並みをゆったり眺めたまに煙を吸い……いつまで吸っても煙が湧き出してこわくなってきたので 2 時間くらいでやめて、さいきん妙にほしくなっているミキサーを買って帰るかとヨドバシに寄っていくらか見たところでべつにすぐ必要なわけではないことに気付いたのでおとなしく帰りました。帰りの電車では修学旅行中らしい中学生くらいの集団が乗り込んできて、全身から発せられるみずみずしいオーラに圧倒されてしまいました。体表の面積と単位面積あたりの若さ放出量で決まる若さの総放出量は中三くらいが最大かもしれません、そしてこの話はなんなんでしょうね。
帰ってからは干していたおふとんを取り込み、さすがに昨日のごはんはひどすぎたので反省して晩は蒸した野菜を中心としたひかえめな献立にします。先日作った青野菜のおひたしはもうあやしくにごりはじめていたのでよく温めてから味噌をといたお味噌汁にして食べました。このお料理はとにかく見た目がかわいく作りたての味も抜群ですが、翌日以降の味の落ち方もかなり迫力がある気がします。食後には値引きのいちごを砂糖で煮てみたら値引きだけあってぜんぜん水が出ず、結局水を足すことになってしまいました。
以上です。どうもありがとうございます